2025.09.30
長距離走者における上り坂インターバル走時の疾走動作の変容について
和田直樹,谷口耕輔,堀内健太郎,嶋野太海,小野木俊,玉城良二,杉田正明 ,西山哲成
Vol.24, 2026
本研究は傾斜地でのインターバル走における疾走動作の変容を疲労前後で比較し, 疲労による疾走速度の低下を抑制するための運動学的提言およびトレーニングの立案に資する所見を得ることを目的とした.疲労の進行に伴いストライド,疾走速度の低下がみられることに加え,先行研究で報告されている傾斜地疾走時の特徴が疲労時により強調され ると仮説立てた.大学陸上長距離選手を対象に,800mの上り坂でインターバル走 を実施し,疲労前後で生理学的指標の測定および疾走動作の撮影をおこなった.上り坂での疾走は疲労に伴い疾走速度が低下し,疾走動作も変容した.非疲労時と疲労時を比較してピッチは変化しなかった一方でストライドは有意に減少し,ピッチ・ス トライド比は有意に増加した.さらに,ストライドの変化率は疾走速度の変化率と有意な 正の相関関係を示したことから,疲労に伴うストライドの減少を抑制することが上り傾斜 のある走路における走行時のパフォーマンス向上に寄与する可能性が示唆された.また, 疲労時は離地時に支持脚の股関節および膝関節角度が有意に小さくなり,反対脚の接地か ら支持期にかけては遊脚の膝関節角度が,支持期から離地にかけては股関節角度が有意に大きくなったことから,長距離走終盤においても大きく速い脚の後方への振り戻し,引きつけ,および前方への振り出しを維持するために下肢の最大筋力および持久力を高めるト レーニングが重要であると考えられる.
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